こんなピアノ教室は嫌だ

2017年の10月から募集を始めたピアノ教室に3人の応募がありました。
はじめにAさん、次にBくん、最後にCさんです。
Aさんは真面目で先生の言うことをよく聞く女の子です。
Bくんも真面目で先生に言われたことはすぐにこなし、とても練習熱心な男の子です。
Cさんは普通の女の子です。

2018年1月、ピアノ教室は募集をやめ、3人はピアノ教室の全生徒さんと顔合わせをしました。
ピアノ教室に通うことになった3人の生徒は先生から練習用のピアノを貸してもらえる約束でした。しかし、ピアノは1台で、あとの2台はキーボードでした。
3人はじゃんけんをして練習用のピアノとキーボードを割り当てました。

2月、3人は目標を持ってピアノを練習しようと先生からアドバイスされました。
先生は「毎年3月にお教室の発表会があるから、それはみんな出演しましょう。そして私の教室の生徒さんはみなさん熱心なので、コンクールに出ることができるレベルに上達します。一番ハードルの低い国内のコンクールから海外のコンクールまでレベルに合わせて選びます。ぜひコンクールに挑戦しましょう。コンクールに出場した曲をそのまま発表会でも披露できるからね。」と言いました。
Cさんはコンクールに出ることに決めました。

 

3月、基礎の練習が始まりました。楽譜の読み方から、指の体操を中心に練習をしました。そして練習曲でのミニ発表会をしました。


4月、いよいよコンクールの曲を弾く練習が始まりました。お試し入学(3ヶ月だけ在籍してゆっくりとピアノを練習する)の生徒さんが2人新たに通い始めました。

 

5月、練習熱心で3人の中で一番ピアノが上手く弾けるBくんは先生との連弾で隣町のコンサートに行くことになりました。Bくんは自分のコンクールでの曲と先生との連弾の曲と2曲を練習することになりました。寝る暇も惜しんで練習したBくんは約1ヶ月で隣町のコンサートのレベルまで上達しました。

6月、隣町のコンサートはローカル雑誌でとり上げられるほどに大盛り上がりでした。隣町のコンサートでは準備が必要だったのでピアノ教室の生徒さんたち数人も準備の手伝いと応援にいきました。準備は大変でしたが連弾が成功し、先生は大喜びでした。

7月、お試し入学の生徒さんの最後の発表会がありました。お試し入学の生徒さんのお別れパーティーをピアノ教室のみんなでしました。今までBくんはキーボードで練習していましたが、やっぱり新しくピアノを買うことにしました。

8月、ピアノ教室は夏休みになり、生徒さんは各自で練習することになりました。

9月、Bくんは隣町のコンサートにまた演奏に行くことになりました。演奏する曲を新しい曲に変え、練習しました。その間AさんとCさんは自分のコンクールの曲を練習しました。

 

10月、3月に開かれるお教室の発表会で演奏する曲を「みんなの前で弾く」という練習をしました。そして来月に控える町の文化祭に向けて準備が始まりました。ピアノ教室ではミニ発表会を行う予定です。文化祭の実行委員会とメールでの打ち合わせが始まりました。Cさんもキーボードで練習をしていましたが、やっぱり新しくピアノを買うことにしました。

 

11月、町の文化祭では多くの人が演奏を聴きに来てくれました。そしてBくんは3月の発表会で演奏する予定の曲が上手く仕上がってきたので、海外のコンクールに出場することになりました。慣れない英語を使わなくてはならないので、Bくん必死の練習がはじまりました。

12月、無事海外コンクールから帰ってきたBくんでしたが、3月のコンサートにむけてゆっくりはしていられません。また隣町のコンサートにも出演が決まったのでコンサートの練習も続きます。

Aさんはどのコンクールに出場するのか、先生と話し合いました。先生は「これではちょっと厳しいかなあ。もうちょっと練習してみよう。」と言いました。
Aさんは練習を続けましたが、コンクールの応募期限が過ぎてしまいました。
Cさんは出場したいコンクールをずっと決めていました。そしてピアノ教室のみんなに「〇〇コンクールに出たい!」とずっと言っていました。コンクールの応募が始まると自身満々で応募し、当日の飛行機も準備しました。

ところが、応募締め切り当日、先生は「今から飛行機キャンセルしたら、キャンセル料取られる?」とCさんに聞きました。Cさんは急いで調べました。「明日までだったらキャンセル料800円です。明日を過ぎるとキャンセル料は10000円です。」
Cさんは急に怖くなりました。Cさんはずっとコンクールに憧れていたのです。
先生は「明日、練習した曲、聞かせてくれる?」とCさんに聞きました。Cさんは平然を装いながら「わかりました」といいました。

Cさんがコンクールに出ることができる先生からのGOサインは明日出されることになりました。しかし不安で練習にならず、さらっと復習をするだけでした。

次の日先生の前で演奏をしました。先生はこれからの日程と今の状態を見比べてよく考えて言いました。「あとはやる気やな。やると決めるならやろう。」

Cさんは「絶対にやります」と言いました。これからCさんの猛練習が始まる予定でしたが...

2019年1月、ピアノ教室は冬休みになりました。Cさんは冬休みにおばあちゃん家に行くので、あまり練習の時間が取れませんでした。

さて、Cさんは本当にコンクールに出ることができるのでしょうか?

<つづく>